・2022年9月3日(土)
午前6時半
介護施設のスタッフさんから
「ちょっと呼吸が弱くなって手足のチアノーゼも出てきているので、早めに来ていただいた方がいいかもしれません」
と連絡。
弟と二人で向かう。
明日は茅ヶ崎の花火大会。
3年ぶりに開催される。
「お母さん、花火見てからかなと思ってたんだけど」
と彼が言う。
到着したら、昨日より弱い呼吸。
確かに足の色も悪くなっている。
でも急変ということではなくて、本当に徐々に徐々に・・
今日の午後は、孫たちも駆けつける。
手を握ってお別れの挨拶をしていた。
作業療法士をしている甥っ子は
「僕の手は温かいって言われるから、あっためてあげるよ」
と両手で母の手を握って、優しく語りかけていた。
それに倣って、姪っ子が手を握って話しかけていると
今日はもう目は開かないかなと思っていた母が、ぼんやりと目を開けて、ちょっと微笑んだ(気がした)
家族に囲まれて、孫たちにも寄り添われて、お母さん、あなたの人生上出来じゃないか^^
自由に、自分の感情に正直に生きてきて、こんな風に出来るなんて思ってた?(笑)
よかったね。
孫たちのエールに励まされたのか、なんだか母の呼吸が落ち着いてきたみたいだ。
彼らが帰った後、心臓のあたりに耳を当ててみる。
トクトクという弱いながらもしっかりとした鼓動が聞こえる。
もう母は飽きてきてるかもしれないけれど、この際、何度でも美空ひばりをかけてみる。
瞑ったままの瞼の下で、眼球が動いているように見えた。
弟が母の手を握って、ありがとうを伝えている。
親孝行できなくてごめんねと涙ぐんでいる。
いやいや、あなたは十分親孝行したわよ。
何より、あんな良い人と結婚したじゃないか。
母とも私とも気の合う女性を連れてくるなんて、それ以上の功績はないよ!(笑)
そして、二人の子どもを授かって、お母さんをおばあちゃんにしてあげたし。
その孫たちは手を握って優しく語りかけてくれるし。
美空ひばりベストが終わって、Apple musicが勝手に懐メロ演歌を自動再生していた。
そして、「東京ナイトクラブ」が流れてきたら、なんと!
またしても薄目を開けた。
「あら?目開けたの? 起きてるのか。じゃぁ一緒に歌う?デュエットしようか?これなら俺も歌えると思うからさ」
と弟が話しかける。
これが母にはとっても嬉しかったのではないかと思う。
え?と思うくらいに、みるみる両目が開いて(半目だけど)明らかに私たちが話していることが聞こえている感じだった。
気をよくした私たちは、母がカラオケでよく歌っていた歌を片っ端からかけてみる。
お母さん、行き付けのカラオケスナックでよくデュエットのお誘い受けてたもんね・・・
いつも着物着ておめかしして、きっとモテてたんだろうね・・・と当時を振り返る。
すると、なんだか何か言いたげな母。
さらに、ベッドサイドで姉弟二人並んで、あれやこれやと話しかける。
いつもみたいに文句でもいいから何か言ってよ、とか。
お母さんが好き勝手しても、私たち二人ともまともに育ってよかったね、とか。
明日、花火大会だよ、一緒に見ようよ、とか。
本当に、耳は最後まで聞こえてるんだな。
音楽の力ってすごいな・・・って感動する。
・・・で、これがよかったのか(ドーパミン出たんだろうなー)
今朝早く呼ばれた感じはどこへやら。
のどの奥が動くと痛そうに眉間に皺が寄るけれど、呼吸は落ち着いてきた。
どうする?と弟と話す。
「一旦帰る?」
「大丈夫かな?」
朝早かった分、二人とも疲れ気味だ。
早めに帰ってとりあえず寝て、夜中に呼び出されても大丈夫なようにしよう、と相談する。
ナースコールでスタッフの人にその旨をつたえる。
後ろ髪ひかれるっていうのはこういうこと言うんだね。
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